【第2話】卒団式準備という名のプレッシャー

【第2話】卒団式準備という名のプレッシャー

12月は、少年野球にとって特別な月だ。
寒さが増す季節でありながら、チームの中はどこか慌ただしく、落ち着かない。

理由はひとつ。
卒団式が近づいてくるからだ。

このチームでは、毎年きちんと卒団式をやる。
形式も、流れも、ある程度「前例」がある。

だからこそ、こう言われる。

「去年と同じでいいよね」
「これ、毎年やってるから」
「失敗できないからさ」

誰も責めていない。
誰も無理を言っているつもりもない。
でも、その言葉が少しずつ、確実に重くのしかかってくる。

見えない仕事が、静かに増えていく

12月に入ると、やることは一気に増えた。

  • 卒団式用の動画作成
  • 各学年・各選手の賞状づくり
  • 親子試合の段取り
  • 当日の流れ確認
  • 過去の資料の掘り起こし

どれも「誰かがやらなきゃいけないこと」だ。

そして気づくと、
それらは自然と、自分のところに集まってきていた。

理由は簡単だ。

  • 前にやったことがある
  • パソコンが使える
  • 映像編集ができる

断る理由が、見つからない。

「ちゃんとやらなきゃ」という空気

卒団式は、子どもたちにとって節目の行事だ。
6年間、あるいはそれ以上続けてきた野球の一区切り。

だからこそ、
「ちゃんとやらなきゃ」という空気が、チーム全体に漂っていた。

でも、その「ちゃんと」は、誰のためのものだろう。

  • 子どものため
  • 親の自己満足
  • 前例を崩さないため

考え始めると、答えが分からなくなる。

それでも、準備は止まらない。

子どもは、ただ楽しみにしているだけなのに

不思議なことに、子どもたちは違った。

  • 親子試合、楽しみだな
  • 何の賞もらえるかな
  • みんなで集まれるの嬉しい

その表情は、驚くほどシンプルだった。

格式も、完成度も、完璧さも、
子どもたちは求めていない。

「楽しいかどうか」
それだけだった。

このときは、まだ気づいていなかった

12月の時点では、まだ余裕があった。
忙しいけれど、何とか回っている。

「まぁ、こんなもんだろう」
「父母会長って、こういうものだろう」

そう思っていた。

でも今振り返ると、この12月は、
確実に“始まり”だった

静かに、音も立てずに、
プレッシャーが積み重なり始めていた。

このときはまだ、
それが家族に影響を与えるとは、想像していなかった。

次回予告(第3話)

1月。
卒団式本番と、初めての大きな遠征。

「イベントを成功させる」という言葉の裏に、
どれだけの調整と気遣いが必要なのか。

楽しい一日の裏側が、少しずつ見え始める。

続きを読む(第3話)

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